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ナトロン湖

タンザニアにあるナトロン湖は強アルカリ塩湖、生き物が石化する恐ろしい湖と聞いていた。ある写真家の撮影した石化したようなフラミンゴや蝙蝠の姿はその恐ろしい話を裏付け、Webで拡散されているこの湖の真っ赤な色はその自然による無意思な恐怖の力を遺憾無く強化していた。そんな恐ろしい湖にどうしても行かなければならなかった。なぜなら行きたかったからだ。

しかし、実際に訪れたナトロン湖はそんな湖ではなかった。美しいフラミンゴの群れがリラックスして水深の浅い沿岸部分で佇んでいた。他にもモモイロペリカンやシギ・チドリ類の群れ、コウノトリ科の鳥たちが集まり、魚をとったり毛繕いをしたりしていた。

写真撮影をしているのは自分の他にもう1組いるくらいで、あとは少数の見学者がいる程度だった。そんな静かな自然の中で様々な鳥が飛来し、あるいは飛来していった。フラミンゴは浅い沿岸部分で長い首を水面によせて餌を探したり、徒歩で場所を変えたりしていた。ペリカンは水深の深い場所で固まって一斉に水にもぐったり水面に出たりを繰り返していた。アフリカヘラサギは妙な長いくちばしを水面に入れ頭を大きく振って歩き、たまにアフリカトキコウと魚を巡って大騒ぎをしたりしていた。静謐と脈動の入り混じる、本当に美しい場所だった。

ちなみに、湖の色は赤くなかった。特段すごい綺麗な色をしているわけでもないが、恐怖を煽るような要素もない。「この湖赤いんじゃないの?」とガイドを務めてくれたマサイ族の方に聞いてみた。「そうだね、たまに赤くなるよ」「いつ赤くなるの?」「さあ、今日じゃないことは確かだね」。人も鳥もリラックスした最高の場所だ。

この場所について
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