瓢湖2023 (冬)
冬の瓢湖に来るのは3回目となる。記念すべき第1回目はまだカメラも持っていなかった。全く違う用事で新潟に来た空き時間に、ハクチョウがたくさん渡ってくる湖があると聞き、暇つぶしに訪れた。それほど期待もしておらず、単にハクチョウが見れるんだいいねえこれも旅だねえって感じで向かった。駐車場に車を停めてドアを開けた時、これまで聞いたことのない夥しい数のケモノの声が鳴り響いていることに気づきそれがハクチョウの合唱であることを認識しその刹那この場所が自分の想像を遥かに超える場所であることを察知した。気づいたら湖まで走っていた。
当時、ハクチョウには「ハクチョウの湖」的な印象を持っていた。なんというか、優雅で美しい鳥で、きっと優雅に飛来し、優雅に湖に浮いて、見るものを優雅な気持ちにさせるのであろうと。しかし、その場で見たハクチョウは違った。獰猛で短気で喧嘩三昧な鳥であった。2vs2で向かい合って鳴きあったその刹那、羽を激しくバタつかせて相手の懐に愛嬌のある顔を突っ込んで大真面目に大揉めだ。もはや不良のタイマンだ。相手が逃げ去ると仲間と勝鬨をあげる。そうした姿を呆然と眺めているうちに、たまならない高揚感が身を包み、私はカメラを手にすることとなった。
瓢湖とハクチョウとの出会いは、私が写真を始め、さまざまな場所に赴くきっかけとなった。国内海外問わずおよそ観光するような場所ではないところに行くことになったのもここから始まっている。しかしそんな私の大いなる感謝の気持ちなど微塵も感じることもなく、今回もハクチョウは隣のグループとの喧嘩に勤しんでいた。
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